31年度1学期始業式講話

 

平成31年度1学期始業式講話

 生徒の皆さん、改めておはようございます。わたくしが生まれた「昭和」から、まもなく、「平成」を経て「令和」へと元号も変わり、新しい時代の幕が開けようとしています。このような節目に、秩父高校で皆さんと生活をともにすることができ、大変光栄に感じています。

 

 わたくしは、本校において昭和51年度から3年間生徒として、平成23年度から職員として3年間、今回で3回本校に関わることになります。

 思い起こせば、43年前、旧体育館で生徒として始業式に参加していたのは、ついこの間のようですが長い月日が経ってしまいました。時間の流れる速さは変わらないのですが、若いときは「ゆっくり」と、年をとるに従い「はやく」感じるようです。皆さんも小学生のころと比べると、時間のたつのが速く感じるようになったと思います。これは、年をとるに従い多くの経験を積み、新鮮な喜びや発見がなくなるからだと言われます。これについては、「ジャネーの法則」と呼ばれるものがあります。興味がある人は、後で調べてください。

 

1 外の世界から刺激を受けることの大切さ

  秩父の風景を見渡すと、あまり変化が感じられないかも知れません。それでも、私が高校生だった40年前と比べると大きく様変わりしています。普段から見慣れた光景は、その変化をなかなか感じ取れないのかもしれません。

 

 私は20代の時、浦和方面の高校に勤務していました。その時初めて担任した生徒が兄弟で学校まで訪ねてくれました。兄は50代前半、弟は40代後半 立派に成長した姿に驚きました。兄は、父の跡を継いで建設会社を経営、弟はレストランを数軒経営し、秩父まで進出してきました。吉田にある「釜の上の農園レストラン」「ワイン工場」の経営に乗り出し、「ビール工場」「チーズ工房」とも」連携し、手広く事業を始めたようでした。

私は、なんでこの時期に秩父で事業を展開するのかと不思議に感じました。二人が話すには、これだけの施設が一か所に集まっている好条件の場所は、そうはないということでした。私たちが見慣れている当たり前の光景だから新しい発想や発見が難しいようです。改めて外部の刺激の重要性に気が付きました。

 外からの刺激は、自分の成長のために不可欠です。色々な人の話を聞きましょう。横瀬町では、秩父の外で活躍する起業家等を招いた「はたらクラス」というプロジェクトを展開しています。後ほど、皆さんにも案内します。参加してみませんか。自分の意欲が低下している時などに特定分野の最先端を走っている人の話を聞くとやる気が復活します。

 

2 秩父高校の生徒に期待すること

  高等学校は、将来、社会の有為な人材として、人類の幸福に貢献するに足るだけの「健全な人間性」を鍛え上げるための練磨育成の場でもあります。この高校時代をよりよく生きるために、次の三つのことを実行して欲しいと思います。

 

(1)一つは、「学ぶ心を熟成する」ということです。学校で学ぶことによって、過去から現在に至る人類の営みを体系的に追体験することが出来ます。学ぶ過程では、謙虚さと我慢が求められますが、漫然と授業を受けていてもだめです。何事にも問題意識を持って、積極的に問いかけていくことが大切です。受身の授業ではなく、なぜそうなのか、常に自問自答しながら、学ぶ心を熟成していってほしいと思います。

 

(2)二つには、「規律ある行動をする」ということです。集団生活を営む人間社会において、私たち一人ひとりの自由や幸せを維持するため、規律を守ることは人類が作り出した知恵です。規律に裏付けられてこそ、真の自由があるのです。「自主自律」における自律とは、外部からの制御から脱して、自身の立てた規範に従って行動することを言います。本校における規律ある高校生活を通して、集団生活における役割の自覚と責任を体得するとともに、思いやりのある、温かく力強い人間として、成長して欲しいと思います。

 

(3)三つには、「可能性に挑戦する」ということです。高校生活は長い人生の中にあって、ほんのわずかな時間に過ぎませんが、最も多感で、生命力に溢れ、人生を左右するような貴重な時期です。

 これから、自分の生き方を懸命に追い求めることになるのです。常に自分自身に何のために高校へ来たかを問いかけてください。志を高く掲げ、明確な目標を持ち、計画的な学びの日々を送らなければなりません。そして、学校が自分のために何をしてくれるかを待つのではなく、自らできることは何かを考え行動しなければならないのです。

 

○終わりに

 本校の百十年を超える伝統は、その上に胡坐をかいていたのでは維持できません。時代の変化に合わせた革新こそが、組織の活力を維持し、新たな伝統へとつなぐことができるのです。人は、現状を変えることに不安を抱きがちです。しかし、その不安を乗り越えた小さな一歩が、新しい時代を切り拓くことになるのです。皆さんに8年後の百二十周年に向け、新たな伝統を積み上げる一員となることを期待しています。

 

卒業式 校長式辞

第69回卒業証書授与式 校長式辞  平成31312

 

 秩父のシンボルである武甲山にも、春の息吹を感じる今日の佳き日に、多数のご来賓の皆様のご臨席を賜り、埼玉県立秩父高等学校第68回卒業証書授与式をかくも盛大に挙行できますこと 心から御礼申し上げます。

 ただ今、卒業証書を授与いたしました238名の皆さん、卒業おめでとうございます。

 皆さんはこれまで小・中・高校と長きにわたり学校生活を送ってきました。朝、登校し、ホームルームで出席をとり、授業を受ける。放課後になると、掃除をし部活に行く。そんな生活もいよいよ今日で終わりです。今後は、それぞれの選択に基づき、自由度が高いけれども、自己責任が問われる新たな生活が始まります。

 さて、皆さんがこれから向かう社会は、ますます変化の激しい社会となってきます。

 2045年には、AIが人間の脳を越えるというシンギュラリティ(技術的特異点)に達すると言われています。喜怒哀楽の感情を持たず、知能のみを駆使して問題解決に当たるAIが人間を支配するAI至上主義の到来を危惧する声さえあります。

そんな中で、未来を生きる皆さんは、何を重視して人生を歩んでいけばいいのか。昨年、全世界でベストセラーとなった『サピエンス全史』やその続編の『ホモデウス』の著者である歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏がこう語っています。

 「学校で習うことの大半は、彼らが40歳の誕生日を迎えるころには、時代遅れになっているだろう。人間が取り残されないためには、自分自身が何者であるかを理解して、自らを作り変えていく柔軟な心を持つことが大切である。」

 「自分を知る努力を怠ると、あなた自身よりAIの方があなたのことをよく知っていて、日々の選択を機械に支配され、欲望すら操作されてしまうであろう」と。

 変化が激しく、さらに様々な課題が一つの国では解決できないグローバル化の時代であるからこそ、違う考えや異文化を許容しつつ、自分らしさは何かを常に考え、自らをアップグレードしていかなくてはなりません。

 そうした中で、今後、皆さんが人生を送る上で、本校の卒業生の活躍は何と言っても心の支えになります。

その一人、昨年7月、グローバル教育の先端を担っている学校法人青山学院。この幼稚園から大学までを統括する院長に、本校卒業生である山本与志春氏が就任されました。山本氏は、他大学の卒業でありながら、青山学院中等部の教師となり、その後いくつかの要職を経て院長になられました。

また、平成26年に本校から東京大学に進学した加藤尚明さんは、ノーベル賞受賞者である梶田隆章氏の研究に欠かせないスーパーカミオカンデの心臓部である光電子増倍管を製造している会社に昨年入社し、世界を意識して研究を重ねています。

 お二人は、本校の卒業生としての誇りと自覚を持ちつつ、自らを作り変えていきながら、日本や世界に通用する教育やモノづくりに励んでおられます。

 さらに、日本全体がインバウンド(外国人観光客の流入)の影響で、世界と繋がっているという感覚は、この秩父地域でも今まで以上に強くなっています。こうした時代だからこそ、皆さんには忘れて欲しくないことがもう一つあります。

 それは、「Think Globally Act Locally」。つまり「地球規模で物事を考え、地域で活動すること」。この言葉は環境問題の解決に関わる合言葉でありましたが、今後は様々な場面に登場してきそうです。

グローバル化の進む中で将来を担う皆さんには、世界で今何が起きているかアンテナを高くしながら、自分たちが生活している地域の伝統や文化にプライドを持ち、地域と世界を繋ぐ人材として活躍してくれることを期待します。

 私は、「Think Globally Act  Locally」を体現させた方として、昨年11月に本校で講演をしていただいた井原愛子さんが思い浮かびます。彼女は、残念ながら本校の卒業生ではありませんが、秩父のお生まれです。様々な苦労を経て大学を卒業した後、スウェーデンの家具メーカー「イケア」に就職します。その時出会った外国人上司の影響で、自分の生きる意味、人生の幸せについて真剣に考えるようになったそうです。そんな中、ふるさと秩父の良さを改めて見直すきっかけができ、秩父に多く自生しているカエデからメープルシロップを作る起業に取り組みました。さらに、彼女は秩父の環境保全の観点から森林の整備にも奔走されています。地球規模で物事を考え、地域で活動されている井原さんの講演には多く生徒が共感を持ったことと思います。

 ここにいる皆さんは、違う考えや異文化を許容しつつ、郷土を愛する気持ちを忘れることなく、自分が何者であるかを理解し、AIが不得意とする感情、つまり心の部分のアップグレードに日々取り組んでいただきたいと思います。

そして、そう遠くない将来、山本氏や加藤君のように、日本国内や世界の各地で、皆さんが活躍する話題を耳にしたり、井原さんのように「Think Globally Act Locally」の実践者として、秩父地域の活性化に奔走している君たちに出会えることを期待しています。

 ここで保護者の皆様に申し上げます。本日はお子様のご卒業、誠におめでとうございます。至らぬ点もあったとは思いますが、教職員一同、この3年間、お子様の心身の成長を願い、一生懸命取り組んでまいりました。残念ながら皆様との御縁はここでいったん結びとなる訳でありますが、これまでのご協力に深く感謝申し上げますとともに、今後とも本校に対する変わらぬご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、卒業生一人一人のこれから歩む人生が、前途洋洋、輝かしいものになることを心から願い、私の式辞といたします。

  

3学期始業式校長あいさつ
3学期始業式校長あいさつ(H31.1.7)
  新年あけましておめでとうございます。平成最後の3学期が始まりました。

 この冬休みの間も、3年生をはじめ多くの皆さんが補習に励んでいたり、寒さにめげず体育館やグランド等で部活動にもよく頑張っていました。

 5月1日の新しい天皇の即位に向けて、新元号の発表が4月1日に決まりました。次の元号で始まる時代が、私たちにとって良い時代になることを願って止みません。

 ところで、先月12月26日に、これからの若者の学びに関するシンポジウムに参加してきました。その中で、2045年にはAIが人間の脳を越える時代となる、いわゆるシンギュラリティ(技術的特異点)に突入するという話がありました。2045年、26年後というと皆さんは40歳代前半、おそらく公私ともに充実した毎日を送っていることでしょう。

 そんな時代を生きる皆さんが、高校生・大学生時代にどんな学びが必要なのか、どんな経験が必要なのか、ということが議論されていました。議論の結論として、①「分からないこと」や「疑問」を大事にする、②みんなで考えることを大事にし、その中で自分と違う考えを認め合う、そして何よりも、③今の自分を大事にする、というものでした。

 今月19日に迫ったセンター試験に臨む3年生には、まずは今の自分の100%を信じて、試験当日によいパフォーマンスが発揮できるように注力してください。さらに、ここに居るすべての3年生。今までも何度も言ったように受験は団体戦です。友人にそっと寄り添ってあげる優しさを持ってください。そして、3月12日には3年生全員にめでたく卒業証書が渡され、それぞれが次なるステージに進み、次代を生き抜く力をもっともっと身に付けて欲しいと思います。

 1・2年生。3学期は次の学年への0学期と言います。一つ上の学年に上がるための大切な時期です。新しい学年を迎えるために、今の自分をもう一度見つめ直し、何が足らないのか、何に取り組まなければならないのかを考え、それを克服するための挑戦をしてほしいと思います。1・2年生の中には、入学当初に入った部活動を色々な事情で辞めている人もいると聞いています。是非、部活動は続けてください。辞めてしまった部への再入部が厳しいならば、運動部・文化部に限らず興味のあるものを見つけて入ってください。そして、卒業まで続ける。

 先ほど話したシンギュラリティへの対応ではありませんが、学年・年齢を越えた人とのつながりは、貴重な経験です。是非、クラスや学年を越えた関りをたくさん持って欲しいと思います。

 最後になりますが、皆さんにとって大切な3学期です。一人一人が、何事にも笑顔で元気に取り組んでいきましょう。




第68回卒業証書授与式校長式辞

                                 第68回卒業証書授与式校長式辞(抜粋)                         平成30年3月13日

 千年の歴史の眠る武甲の峰にも、春の息吹を感じる今日の佳き日に、多数のご来賓並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、埼玉県立秩父高等学校第68回卒業証書授与式をかくも盛大に挙行できますことを心から御礼申し上げます。

 ただ今、卒業証書を授与いたしました241名の皆さん、卒業おめでとうございます。 

 今、手にされた卒業証書は、皆さんの3年間の、たゆまぬ努力の結果であるとともに、愛情をもって育んでこられたご家族、そして、PTA・後援会、同窓会をはじめとする地域の方々の支えがあって得られたものであります。皆さんには、是非、そうした方に思いを致し、感謝の気持ちを忘れないでほしいと思います。

 皆さんがこれから向かう社会は、ますます多様な価値観が存在する変化の激しい社会です。高校や大学を卒業したからといって、必ずしも安定した生活が保証されている訳ではありません。しかしながら、変化の激しい社会であるからこそ、大きな可能性やチャンスがたくさん待っているとも言えます。

 そこで、私から一つの言葉と、その言葉に関わるお願いをしたいと思います。

 グローバル社会の到来が叫ばれて久しい昨今ですが、皆さんの中には、「グローカル」という言葉を聞いた人もいるかと思います。「グローバル」と「ローカル」を組み合わせた造語で、その意味は、国境を越えた地球規模の視野と、草の根の地域の視点で、様々な問題を捉えていこうという考え方です。

 この言葉は、1980年代に日本の企業が使い始め、10年後には英語圏でも使われるようになったそうです。

 本校を巣立ち、このあと上級学校へ進む人、直接社会に飛び込む人など、進む道は様々ですが、将来地球規模で活躍する人が、この中からたくさん出て来るはずです。

 そうした時、皆さんには、是非、「グローカル」な視点で物事を捉えられる人材になって欲しいと思っています。

 ここで、「秩父」という「ローカル」な視点で、地球規模の「グローバル」な視野に立って活躍している人を紹介したいと思います。

 皆さんは、肥土伊知郎さんという秩父在住の方をご存知でしょうか。20歳前の皆さんは、知っている人は少ないとは思いますが、メディアにも数多く紹介されている「イチローズモルト」という銘柄のウィスキー作りをしている方です。近年、海外の品評会で世界最高賞を獲得するなど、欧米では大変な知名度を誇っています。

 肥土さんは、実家の酒造会社が倒産しそうになったため、勤務していた会社を辞め、家業を継いだそうです。そして、ウィスキーの本場を視察したり、並々ならぬ努力を重ね、秩父の特性を生かした本格的なウィスキーを世に出すことに成功しました。

 また、秩父から和菓子を世界に売り込んだ方もいます。秩父の活性化を図るために約160の企業で構成された「FIND CHICHIBU」という団体では、賞味期限が短く、海外では販売することが難しいと考えられていた和菓子を、昨年度、アメリカカリフォルニア州の日系スーパーで販売することに成功しました。このビジネスモデルを仕掛けた和菓子店の店主は、和菓子の保存方法について試行錯誤しながら、現地での販売会を行い、契約にこぎ着けたそうです。実はこの和菓子店の店主は、本校の卒業生の方であります。

 このように世界で通用する語学力や豊かな経験を生かし、地域の活性化に貢献する人材、あるいは、地域の魅力を世界に発信して地域と海外の架け橋となる人材。地方創生や地域社会の復活が求められている日本においては、このような人材がたくさん現れることを期待しているのです。

 ここにいる皆さんの中には、先程紹介した方のように地域から世界に発信して、地域を活性化してくれる人や、自ら海外に打って出て日本との架け橋となる人が出てくることでしょう。

 そうした人も含め皆さんには、日本独自の伝統や文化、さらに秩父地域の伝統文化に造形を深め、世界中どこに住んでいても日本人、そして秩父人としてのプライドやアイデンティティを持ち、さらに、その地で暮らす人々や、その土地の伝統文化に対するリスペクトを忘れず、「グローカル」な視点で、様々な課題に立ち向かっていただきたいと願っています。

 そう遠くない将来、日本国内にとどまらず世界各地で、皆さんが活躍する話題を耳にしたり、「グローカル」な視野に立って、秩父地域の活性化に奔走している姿を目にすることを期待しています。

 それでは241名の卒業生一人一人が、それぞれの人生において、最高の花を咲かせてくれることを心から願い、私の式辞といたします。